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なんでギリギリに提出するの!?「学生症候群」に対処しよう

なんで締め切りギリギリに提出するんだろう? 

「日数に余裕があったはずなのに、なんで締め切りギリギリになるんですか?」
よくマンガに出てくる編集者のような悩みはありませんか?

学生症候群(Student Syndrome)」とその対処法を知っていると解決出来るかも。

本日は「学生症候群」を紹介します。

学生だけではない!学生症候群

「夏休みの宿題ってなんでギリギリまでやらなかったんだろう…。」、
そんな経験はありませんか?

実は人間には「どうせまだ余裕があるから、後にしよう。」と、
タスクを先延ばしにすることがあります。
このような症状を「学生症候群」と呼びます。
「ザ・ゴール」で有名なエリヤ・ゴールドラットの小説「クリティカルチェーン」が初出です。
学生症候群を解決する「クリティカルチェーン法」について、
先の気になる魅力的なストーリーとともに学習出来る名著です!


制約理論についても書かれておりますので、ザ・ゴールと併せて確認するとより理解が深まります。

ザ・ゴールに関しては、漫画版も分かりやすくておすすめです。
ザ・ゴール2も漫画になってますね。

「ぎりぎりまでやらない。」その気持ち、わかるような気もします。
私もぎりぎりまで宿題やらないタイプでした。

一夜漬けなんて言葉も、ギリギリまで動かない特性があるからこそ生まれた言葉でしょう。

PMBOKでは、アクティビティ所要期間の見積もりプロセスにて、
スタッフの動機付けとして、学生症候群の特性を認識する必要があると書かれています。

ステップごとにバッファをとらない

では、どう対処すれば良いのでしょうか?

結論から言いますと、
各ステップ間で儲けているバッファを無くして、
プロジェクトのバッファとして、後ろにくっつけます。


例えばゲームを作るプロジェクトを仮定します。
下記の3ステップの例を考えてみます。

  • 概要書を書くステップ
  • 作成するステップ
  • ドッキングさせて品質を確認するステップ

それぞれのステップが50%で確率で終わる日数を10日とし、
そこにバッファとして10日を設けて90%の確率で終わるステップとします。

  • 概要書を書くステップ(10日+バッファ10日)
  • 作成するステップ(10日+バッファ10日)
  • ドッキングさせて品質を確認するステップ(10日+バッファ10日)

ここで、概要書を書くステップを担当する人の気持ちを考えてみます。

「20日もあるから、もうちょっと後になってから手を動かすか。」

もしくは早く終わったとしても

「もう終わっているけど、報告したら追加の作業を積まれるかも。」
という意識が働くかもしれません。

学生症候群ですね。

その結果、概要書を書くステップが22日かかると、
作成するステップが2日遅れで開始されることになります。

さらに、作成するステップが2日遅れた場合
概要書を書くステップの2日遅れとあわせて、4日の遅れが生じ44日後の開始になります。
やる気を出していれば、実はそれぞれのステップ5日で終わっていたかもしれませんね。

また各ステップにバッファを設けていると、「パーキンソンの法則」にも注意を払う必要があります。

第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第2法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

引用元:Wikipedia (パーキンソンの法則) より

これらを防止するため、
各ステップのバッファ期間を無くして最後にプロジェクトバッファとしてとっておきます。
各ステップのバッファが無くなりますが、
期間に関しては出来るかできないかのギリギリ(50%の確率)で見積もります。
*これで学生症候群を防ぎます。

  • 概要書を書くステップ(10日+バッファ0日)
  • 作成するステップ(10日+バッファ0日)
  • ドッキングさせて品質を確認するステップ(10日+バッファ0日)
  • プロジェクトバッファ (30日)

プロジェクトバッファは、
実際ににクリティカルパス上の作業が遅れた時など、適切なタイミングで利用していきます。

各担当者は余裕がない状態になりますが、
そもそも各ステップでの成功率が50%になるので、個々のステップの遅れが生じることもあります。
そこは、進捗率とバッファ消費率の様子を見て、対策を行っています。
プロジェクトバッファを上手く利用します。

学生症候群という特性を意識して、ひとりでも対策してみよう

「とはいっても、それはプロジェクトマネジャーが考えることでしょ?」と思ってませんか?

自分自身でもセルフコントロールを行うことはできます。

上記のプロジェクトバッファを最後に持ってくるやり方を参考に、
自分のタスクに対するバッファを最後に持っておくスケジュールを組んでおきます。
それをあらかじめ、リーダーや周りの人に、
「わたし、この日はここまでやります!」
「その代わり、出来なかったときのために10日ほどバッファを設けておきます。」と先に宣言して、
第三者にチェックしてもらうよう自発的に行動します。
学生症候群のような特性があることをあらかじめ意識して、
想定したスケジューリングを組んでおきます。
あらかじめ、第三者に公言することで、チェックを第三者にゆだねます。
これにより学生症候群をある程度コントロール出来るのではないでしょうか?

セルフコントロールに大切なのは以下の3点でしょうか。

  • 学生症候群という特性を意識しておくこと
  • 意識した上でスケジューリングすること
  • 第三者にそのスケジュールを伝えて、自分を追い込んでおくこと

クリティカルチェーンを学ぼう!

今回は学生症候群を紹介しました。

私も初めて知った時は、「なるほど。確かにね~。」と思いました。
怠け者ではなく、「そういった特性があるんだ。」ということを意識することで、
対策を立てる事が出来ます。

エリヤ・ゴールドラットの小説、
「クリティカルチェーン」を読むと
学生症候群を含めた「クリティカルチェーン法」について学ぶことが出来ます。
ストーリー仕立てになっており、続きが気になる展開が続きますので、おすすめです。

参考書籍:「クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
      著者:エリヤフ ゴールドラット 、三本木 亮 」
     「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOK®ガイド 第6版」