家族の団らん、そして情熱を持ち続けた男の物語
本日は、岩宿遺跡を発見した相沢忠洋の自伝、「岩宿の発見」ー幻の旧石器をもとめてー を紹介します。
旧石器時代が日本に存在していたことを証明する「岩宿遺跡」を発見した考古学者、
相沢忠洋さんの自伝になります。
物語は戦前、相沢さんの幼少期から始まります。
妹が亡くなり、両親が離婚していき、ショッキングな出来事が相次ぎます。
しかし、相沢さんの実家である、鎌倉の工事現場から発見される土器、
その土器を囲う古代人の「一家団らん」に憧れをもち、考古学の世界に興味を持ち始めていきます。
その後、太平洋戦争に巻き込まれていきますが、考古学に対する情熱は持ち続けます。
やがて、それまで日本には存在しないとされていた、
「旧石器時代の存在」を証明する、岩宿遺跡の発見へと繋がっていく物語です。
相沢さんは戦後、行商で生計を立てながら、考古学を続けます。
戦後の話は、当時を生きた人が書かれた相沢さんの自伝なので、リアリティが高いのです。
当時の大変な状態がリアリティたっぷりに伝わりますが、
その中で逞しく生きる姿は、今を生きる我々にも活力を与えてくれます!
私が特に印象に残っているシーンがあります。
行商していくなかで、相沢さんがとある老僧とお話しをするシーンがあるのですが、
その中で老僧が印象深いことを相沢さんに伝えます。
自分を知るころには、年を取って動けなくなる。
「岩宿」の発見 -幻の旧石器をもとめて- より引用
動けるうちに自分を知るように努力するこった。
その自分を知るにゃな、苦しんで苦しんで苦しむこったな、それを行というてな、
そうじゃ、あんたがやっているのは、行商といったな。
自分を知るために苦しむ、苦しむとは努力すると置き換えても良いでしょう。
「それを行という」というセリフに心を打たれました。
また、相沢さんは生活苦のためにしぶしぶ行商をやっているわけではなく、
行商をやることで様々な人と話が出来、行商を好きでやっていたことも伝わります。
考古学の調査でもさまざまな問題が起きますが、
最終的に岩宿の遺跡を発見し、物語は終局へと向かっていきます。
幼少期にうしなった「家族との一家団らん」という夢。
その夢を古代へと追い求めた男のドラマが見事に描かれていました。
あとがきに、この自伝を書くことにためらいがあったと書かれてました。
そののち、読者のお役に立つところがあるとするならば…と書かれていましたが、
時代を超えて、少なくとも私の心は揺り動かされ、元気をもらう事が出来ました。
物語としても読みやすく、引き込まれてしまいます。
「何かにチャレンジをしているけど、ちょっと凹んでしまってモチベーションが下がってしまった。」
そんなアナタに、特におススメしたい一冊となります。