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チームメンバーの感情を読み取る・ムードチャートのススメ

チームメンバーが急に辞表を出して困ることはないですか?

一見何の変哲もないと思っていたチームメンバーや部下が急に辞表を出してくることはないでしょうか?

「え、そんなに思いつめていたなら早く相談してよ!」と思われる事もあるかもしれません。

日報を見ても淡々と作業報告が書かれており、一見何の問題もないように見えるかもしれませんが、
様々なストレスや思いもよらない所で悩んでいることだってあるわけです。

しっかりと話を丁寧に聞けば良いのですが、
危険信号を察知する事が出来る「ムードチャート」について紹介します。

「ムードチャート」はPMBOKガイド第7版にも紹介されている
ステークホルダーの感情を追跡できるツールです。

ムードチャート

ムードチャートとは、
毎日の終業時や日報などに今日の自分の気持ちをスタンプで示すだけの簡単なツールです。

ムードチャートのメリット

私自身もこの「ムードチャート」という言葉はPMBOK第7版を読むまで知らなかったのですが、
同じように「良い状態」「普通」「あんまりよくない状態」といったマークをスタンプしてもらう
取り組みを行っていました。

日報や日誌ですと、なかなかこの感情を読み取ることは出来ません。
例えば人に気を遣う方は、やや嫌な事があってもそれを日報などで言葉にすることはありません。
逆に嫌な事があった場合、それを赤裸々に書く人もたまにいらっしゃいます。
その場合、誰かを攻撃する傾向があるため、
そのような書き込みは注意する傾向にあります。

席が近い場合などでは、顔色を見たりすることで変化に気が付く事もあるのですが、
リモートワークが主体になると、顔色を伺う機会も減っていきます。

「自分の感情」をペタンとスタンプするだけなら、
気を遣う必要もないですし、誰かを攻撃することもありません。
ですので、自然にスタンプを押して感情を表現しやすくなります。

また、何か月も続けていくと傾向も見えます。
例えば、「この人は残業を繰り返すと極端に嫌な気持ちになるんだな。」とか、
「この人は月曜日に気分が乗らなくて、金曜日に気分が上がっていくんだな。」とか、
「この人は沢山仕事を行っている時の方が感情面がのっているんだな。」とか、
そんな傾向がわかることもあります。

嫌な気持ちマークが増えた時は、何か良くない状態が続いているということがわかります。
一度手を止めて話し合いの機会をもったり、
計画を変えるといったアクションを取ることも出来ます。

しかし、メリットばかりではありません。
デメリットもあります。

ムードチャートのデメリット

ムードチャートのデメリットとしては、
相手の感情マークの影響を受けてしまうことです。

例えば上司の感情マークがずっと悪かったら、
その部下も影響を受けてしまったり、悪い方向に捉えてしまうことだってあります。
上手く公開範囲を調整したりすることで対処するか、
あまりにも悪影響を与えるようなら、利用しないといった判断も必要でしょう。

また人によって感情マークの振れ幅が違う事もあるため、統一感を取るのが難しい場合があります。
たとえば、ちょっと嫌なことがあっただけで「悪い感情マーク」をつける人もいれば、
余程のことが無い限り「通常の感情マーク」の人だっています。
なので、ある程度時間をかけて、感情マークの付け方の特性を見ていく必要があります。

ムードチャートを小さい範囲から始めてみよう

ムードチャートをいきなり大きなチームに当てはめると管理が難しい為、
まずは小さい範囲から初めてみて、チームの状況が把握しやすくなるようなら、
広げてみるといった形が良いでしょう。

思わぬ感情のサインや特性に気づく事が出来るかもしれません。

参考資料:
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+
プロジェクトマネジメント標準
PMI日本支部 監訳