孫子の兵法

孫子の兵法をテーラリング! 戦わずして勝つ、謀攻篇に学ぶ「コンフリクトマネジメント」

孫子の兵法「謀攻篇」から学ぶ、コンフリクトマネジメント

あなたは「戦争で勝利する」といえば、どんなイメージをお持ちでしょうか?

二大勢力がぶつかり合い勝利する。
といったイメージでしょうか?

歴史を題材にした映画やマンガでも、派手な戦い末に勝利する形が多いですよね。

では、中国の兵法書である孫子はどう伝えているのでしょう?

「100回戦って100回勝つ」のはどうでしょう?
これはすごいですよね。100回やって全勝なのですから。

しかし、孫子はこれを最善とは伝えていません。

え? でも100回戦って100回勝てば、最強ですよね。
それ以上何があるんですか?と思いますよね。

孫子は「戦わずして勝つ」のが最善と伝えています。

「戦わずして勝つ…。戦っていないじゃないですか? 屁理屈ではないか?」
と思う方もいるかもしれません。

しかし、孫子の兵法が伝えるのは、絶対勝つ方法ではなく、絶対負けない方法
そして自国の利益を得る方法を伝えているのです。

現代でもさまざまな利害の不一致があると思います。

つまりコンフリクトです。

本日は、孫子の兵法の謀攻篇、戦わずして勝つを教訓に、
現代でも活用できるコンフリクトマネジメントについてお伝えします。

戦わずして勝つとは?

「戦わずして勝つ」の意味を見ていきましょう。

孫子の兵法、謀攻篇(ぼうこうへん)では、
戦争に勝つ最善の方法は「実際に戦争せずに敵国を保全したまま勝つことである」と言っています。

自国の利益を考えた時、
敵国に対して武力を利用してリソースを大量導入し、疲弊したのちに利益を得るのはけして最善の方法ではないと伝えているのです。

謀攻篇の謀(ぼう)とは、謀(はかりごと)のことで、
ものごとを上手く進めるように、あらかじめ計画して、準備しておくことです。

戦わずして勝つとは、何もせず戦わないという意味ではありません。

自国の利益が得られるには、戦争することが最善ではなく、
謀(はかりごと)などの準備を通して、もっとやるべきことがあると伝えているのです。

相手の謀を打ち、WinWinの関係を築いていこう!

孫子は言います。

戦争に勝つ最も良い方法は、敵国を保全したまま降伏させることで、
撃破して屈服させるのは、得策ではないと。

  • 1番良い戦い方は、敵国の策略を未然に防ぐこと
  • 2番目に良い戦い方は、敵国と他国との同盟関係を断つように動くこと
  • 3番目は4番目では、いよいよどうしようもなくなったら戦争をするが、城を攻めたりするのは最も良くない

実際に軍事衝突することは、自国の利益にとってもけして最善ではありませんよね。
「リサーチをしっかりして、敵国が何を考えているのか把握、策略を未然に防ぐことで自国の利益を得ること」をまずは優先すべきと伝えているのです。

うーん、現代でも「ハッ」とさせられる考え方ですよね。

自分や自分の組織と対立構成になっていると、どうしても相手を屈服させようとしがちです。

同じチームでのぶつかり合いや1対1でもそうですよね。

意見がぶつかったときに、こちらの正当性を通そうとして、
相手の矛盾点を指摘しようとすることってあると思います。

それでも良い場合もありますが、
ここで大事なことは、相手を屈服させようとするのではなく、
お互いWinWinの関係を築いていくことで利益を得るような行動をすることです。

そのために、敵対している相手がいれば、その奥にある考えから、
利害が一致することが無いか入念な対話やリサーチをすることをまずやってみることではないでしょうか?

それが敵国の策略を未然に防ぐために起こす行動だと言っているのです。

それでもだめなら、敵国と他国との同盟関係を断つように動くことですが、
現代ならば、こちらの味方を増やしていくアクションを取っていくことでしょうか。

それでもだめなら…。
いよいよ戦争を行うという選択肢を取っていくわけです。

現代ですと、こちらの利益を得るために、
相手に仕方がないけど納得してもらうアクションを取っていくことですよね。

それでは戦争や争いになったときはどのように対応すればよいのでしょうか?

孫子は言っています。

こちらの軍勢が圧倒的に多くて優位ならば、城を包囲して降伏を勧め、
劣勢ならば撤退するように行動すると。

要は、自分と相手の実力差を見て、見合った対応するということですね。

どんな状態になったとしても、常に自分と相手の情報収集から最適な判断を求めているわけです。

コンフリクトを発生させない。最高のコンフリクトマネジメント

孫子の兵法、謀攻篇、いや全てにおいて重要なことは、
例え戦争になっても、どんな状況になっても、自分と相手の情報収集をしっかり行い、
その状況に合わせた最適なケースを探すということです。

謀攻篇の中で有名な言葉があります。

「彼を知り己を知らば、百戦して殆うからず」

自身を知り、相手をしっていれば、負けることはない。という意味です。

現代では、自分と相手、双方の利益を求めるWinWinの関係を良しとします。
しかし、すぐに相手を打ち負かすことに意識が向きがちです。

感情的にならず、先の利益を考えて、その状況に応じた対応を考えていく。
そのために、まずは現状のリサーチを行う。

そうすれば、そもそもコンフリクトは発生しない。

プロジェクトマネジャーに求められる行動の一つに、プロアクティブ(自発的)に動くというものがあります。

つまり問題が発生する前に、先を読み未然に防ぐように活動すること。

それがプロアクティブな行動になります。

孫子が伝えているのも「プロアクティブな行動」であり、
コンフリクトを発生させない為に行動すること。それが最善のコンフリクトマネジメント
と伝えているのではないでしょうか?

そして、「どんな状況に陥っても先を読んでいく行動を行って、最適な方法を探していきなさい。」と
語り掛けているような気がします。

参考書籍:孫子 (講談社学術文庫) 著者:浅野 裕一