チームに有能な人がいない? チーム全員を有能にする勢いの力
「優秀な人がウチのチームには足りなくて。」
「リーダー不足。自発的に動ける人が足りない。」
こんなセリフをリーダーから聞いたことありませんか?
もしくはあなたがリーダーならそう思った事はありませんか?
孫子の生きた春秋戦国時代、戦争に徴兵されたのは、
精鋭部隊ではなく、戦闘経験のない農民が殆どだったそうです。
今の時代なら「無能」と言われる人々かもしれませんね。
孫子はそういった農民たちをどう考えていたのでしょうか?
「無能」と考えていたのでしょうか?
今日は「孫子の兵法・勢篇」から全員を有能な勇者にする考え方をお伝えします。
相手の行動原理を知って有利な状況を作る
善く敵を動かす者は、之れに形すれば、敵必ず之れに従い、之れに予うれば、
引用元:孫子 著者:浅野裕一
敵必ず之れを取る。
此処を以て之れを動かし、卒を以て之れを待つ。
孫子の兵法、勢篇からの引用です。
特定のはっきりした行動を軍が行えば、敵は必ずその行動に対応しようとします。
例えば、敵国の大事な補給地などを攻撃するそぶりをみせれば、必ずその補給地に救援をよこします。

また、自国の大事な拠点をわざと放棄すると、必ず敵はそこを占領しようとします。

他にも、自軍の一部隊をわざと孤立させると、その一部隊を必ず攻撃します。

このように、敵軍の行動を予測して、
いわゆる囮となる行動を取り、相手をこちらの意図したポイントに誘導出来るということが書いてあります。
真っ向から戦うのではなく、こちらが有利に働くように誘導していくわけですね。
一見ずる賢いようなイメージを持たれるかもしれませんが、
応用例を考えてみます。
例えば、
自己啓発本「7つの習慣」の中から、相手の話を傾聴する「第5の習慣」でも似たような話があります。
相手に理解されるには、まずこちらが相手を理解し、
信用を作った上で話を聞いてあげる。
その上で初めて相手はこちらの話を理解しようとする。
といったエトス・パトス・ロゴスといった考え方があります。
この7つの習慣の話「相手の話をしっかり聞いて信用を作る。」という行為も、
ある意味、誘導とも捉えることが出来ますよね。
直接的な行動を起こす前に、
相手の行動原理や目的を読み取って行動していくと心得ておくと良いでしょう。
相手や市場の行動原理や真理には、根本原因を探す分析法を使っていくのおススメです。
例えば「なぜ~?」という質問を考えていく「なぜなぜ分析」や、
魚の骨のように原因を図示する「フィッシュボーンチャート」などを利用してみるのも良いでしょう。
善く戦う者はこれを勢に求めて人に責めず
故に善く戦う者は、之れを勢に求め、人に責めずして、之れが用を為す。
引用元:孫子 著者:浅野裕一
相手を誘導し、自軍が圧倒的に有利な状態だと分かると「勢い」がつきます。
こうなると、臆病者であろうが勇者であろうが、
人の性格に関係なく「全員が勇気づいて一丸と」なります。
チームメンバーが一丸となるようにただ鼓舞するだけや、
優秀な人材を求めるだけでなく、
モチベーションが上がり、やる気が起こるような環境や雰囲気、
そのような状況を創り出していくこと。
即ち、勢いがつくように働きかけることを求めているわけです。
ただ鼓舞するだけでなく…。

有利な流れが来るように働きかけると、
どんな人も勇者になれる。

春秋戦国時代、
精鋭部隊ではなく、戦闘経験のない農民から組織された部隊で戦う必要がありました。
もちろんモチベーションも低ければ、怠け者や臆病者も多かったでしょう。
訓練する余裕もあるかどうかわかりません。
しかし、「精鋭部隊がいない」と嘆くだけは相手に負けてしまうだけです。
このように、相手の心理と味方の心理を考えて、
こちらに有利な状態を創り出し、勢いのある状況を創り出します。
そのような状況を創り出せば、
「全員が優秀で自発的な勇者に変わる」と孫子は伝えています。
現代ではさまざまな雇用形態の中で一つのチームが出来ています。
チームメンバーのモチベーション、求めているものは千差万別です。
また、世の中の状況も刻一刻と変化していきます。
部下やチームメンバーの能力不足を嘆いても何も変わりません。
状況の変化を嘆いても何も変わりません。
「彼らの能力を引き出す為、勢いのある状況を創り出していくべき」でしょう。
参考書籍:孫子 (講談社学術文庫) 著者:浅野 裕一