孫子の兵法

孫子の兵法「九変篇」にまなぶ・2500年前のリスクマネジメント

2500年前のリスクマネジメントにまなぶ

2500年前の兵法書である、孫子の兵法をご存じでしょうか?

現代でも様々なプロジェクトの経験から成る、「知識体系集のPMBOK」などがありますが、
孫子の兵法からも、現代人でも「はっ」とさせられる言葉や教訓が沢山書かれています。

孫子の兵法とPMBOKの共通点の一つに、
「プロアクティブ(先を予測して動く)」という考え方があります。
このプロアクティブという考え方を念頭に、孫子の兵法からリスクについて考えてみます。

リスク(Risk)と問題(Problem)の違いは何でしょうか?

リスクとは、まだ起きていない先に起こるであろう、良い事や悪い事を想定することですよね。
問題とは、「既に発生している事象」になります。

つまり、リスクを考えるとは、
未来をよみ、問題を事前に防いだり、好機を捕まえるように動くことです。

問題が起きてからアクションを起こす様子はよく見かけますが、
予めリスクをしっかり考えて、
分類したりする作業に時間をかけることはあまり見かけなかったりします。

本日は、孫子の兵法、九変篇の中の一節
「智者の慮は、必ず利害を雑う」より、リスクマネジメントを考えてみます。

九変とは?

九変とは?

孫子の兵法「九変篇」では 下記に表す「9つの状況に応じて対応する」
つまり状況に応じて対応策を変えていく重要性が書かれています。

  • 足場の良くない所には宿営しない
  • 複数の他国と自国が接している土地では、外交で仲良くなっておく
  • 自国から遠く離れている土地は素早く通りすぎる
  • 山や丘に囲まれた土地では、脱出や後退の計画を立てる
  • 逃げ場がなく、敵が正面にいる場合は、必死に戦って脱出する
  • 道の中には、経由してはならない道がある
    (行軍が上手く運ばなくなる狭い道や、軍が離ればなれになってしまうような道)
  • 敵軍の中には、攻撃してはならない敵軍がいる
    (一見正面攻撃で撃破できそうでも、後々もっと上手に攻略出来そうな敵軍は攻撃しないなど)
  • 城の中には、攻撃してはならない城がある
    (別の敵軍を攻略したのち、城ごと降伏してくれそうな可能性がある場合など)
  • 土地には争奪してはいけない土地がある
    (例え争奪出来ても、不毛な土地は犠牲を出してまで争奪する必要はない)

要はあらゆる状況に応じて、対応を応用していく必要があるわけですね。

智者の慮は、必ず利害を雑う

また、状況に応じるだけでなく、
一つの事柄に関しても、利と害メリットとデメリット
片方だけを考えるのではなく、双方を考えていく必要があることを説いています。
これが「智者の慮は、必ず利害を雑う」という一節にも表れています。

例えば「めちゃくちゃチャンスですよ! この機を逃すことなんて考えられません!」と、
利益だけを考えていると、思わぬ問題が発生するかもしれません。

逆に「それって、上手くいかないと思います。 やめておくべきです。」と、
ネガティブな事だけを考えると、思わぬ好機を逃しているかもしれません。

必ず、一つの事柄に対して「脅威と好機」双方を考えていくことで、
不測の事態、もしくは思わぬ好機に対応出来ていくわけです。

つまり、
「プロアクティブに様々なリスクを考慮して、備えておきなさい」と言っているわけですね。
現代のリスクマネジメントにも通じますね。

リスクマネジメント計画書を作成してみよう!

それでは、この「孫子の兵法の教訓」を現代ではどう活かせば良いのでしょうか?

PMBOKガイドでは、
リスクマネジメントに関して体系的な方法が書かれております。

まずは「リスクマネジメント計画書」
つまり、リスクを取り扱う計画を考えてみてはいかがでしょうか?

リスクマネジメント計画書には、下記のような項目を用意します。

  • リスク戦略(プロジェクトでリスクマネジメントを行うための手法を記述)
  • 方法論(具体的なリスクマネジメントのツールや方法論、データ源を定義)
  • リスクを扱う人の役割や責任範囲
  • リスクマネジメントの活動を行うための資金調達について
  • どのタイミングでどのくらいリスクマネジメントを行うか定義する
  • リスクの区分をグループ化したRBS(Risk Breakdown Structure)

リスクとは未来に対する活動です。
今後起こるであろう「脅威や好機」、そこにきっちり時間とお金を使って考えていく。

そういったことを意識するだけでも、
本来起きていたであろう「大きな問題」や「取り損ねた好機」を、
未然に防ぐ事が出来るプロアクティブな行動であるのです。

参考書籍:孫子 (講談社学術文庫) 著者:浅野 裕一