孫子の兵法
孫子は全部で13篇で成り立っており、それぞれテーマが存在しております。
その中の計篇(計画に関することが書かれている篇)から、
「兵は詭道なり」という有名な一文を見てみましょう。
「兵は詭道なり」とは、
「戦争とは敵をだます行為なので、こちらに利益が出るよう臨機応変にだましていくこと。」になります。
なんだか、それってどうなのよ?と思いますよね。
この「兵は詭道なり」をプロジェクトや生活にテーラリング(活用)していけるのでしょうか?
「詭道」って卑怯な事?
「相手をだます。」と聞くと、不道徳で悪いこと、良くないイメージがありますよね。
しかし、この「兵は詭道なり」の本質は何処にあるのでしょうか?
例えばスポーツを考えてみましょう。
サッカーやバスケットなどにフェイントってありますよね。
しかし、卑怯な印象はないですよね?
フェイントは対戦相手や対戦チームに勝つためのテクニックとして捉えますよね。
またビジネスの場においても、「本音と建て前」という言葉があります。
なんでも「本音」が話すのが良いとは限らないですよね。
相手のことを快く思えない時に、
ずばっと「あなたのことが大嫌いです!」と言ったらどうなるのでしょうか?
良くない結果になる可能性が高いですよね。
それでは、なぜ本音だけでなく建て前が必要なのでしょう?
それは「相手とWINWINの関係を築く為」ではないでしょうか?
本音を言ってしまうことが全て良い結果をもたらすとは限りません。
こうやって考えていくと、相手に本当のことを伝えない方が良い結果につながる事が見えていきます。
一概に、「詭道=卑怯」とは言えませんよね。
ステークホルダーマネジメントに活かしてみよう
少し話がそれます。
ステークホルダーの関与をより良くしていくために、
「ステークホルダー関与度評価マトリクス」といったものがあります。
これは、各ステークホルダーの関与度を以下の5つの分類にわけて、
現在の関与度と求めている関与度とのギャップを測るものです。
- 不認識
プロジェクトを認識していない状態 - 抵抗
プロジェクトに対して反対の態度をとっている状態 - 中立
プロジェクトを認識しているが、どうでもよいと思っている状態 - 支持
プロジェクトを認識し、成功してほしいと思っている状態 - 指導
プロジェクトを確実に達成することに積極的に取り組んでいる状態
これを下記の表に記載します。
現在の関与度を「C(Current)」、ステークホルダーに求めている関与度を「D(Desire)」とします。
ステークホルダー関与度マトリクス | 不認識 | 抵抗 | 中立 | 支持 | 指導 |
Aさん | C | D | |||
Bさん | C | D | |||
Cさん | C | D |
関与度評価マトリクスは基本的にはステークホルダーには見せないものです。
(そりゃそうですよね)
関与度評価マトリクスが出来たら、
求めている関与度まで上げるために、さまざまなアプローチをしていくことになると思います。
真正面からだけではなく、D(Desire)に関与度を上げるための方法を考えてみましょう。
この時のアプローチに「兵は詭道なり」という考え方がヒントになるかもしれません。
目的をしっかり定義して最適な方法を考える
孫子の時代は春秋戦国時代、一歩間違うと大惨事になります。
「戦争はなるべくしない。」「どうしようもなくなったらさっと終わらせる。」など、
戦争をなるべく回避する姿が目的として見られます。
そういった目的を達成する為に詭道が最適な方法となる場合もあるという意味だととらえると、
「兵は詭道なり」といった考え方が、一概に悪いことではないことが分かります。
時には、味方やチームメンバーにも本当のことを言わない方が良いこともあります。
大事なことは「目的をしっかり定義」すること。
その上で最適な解決方法をとっていくことを「兵は詭道なり」という一文から学べるのではないでしょうか?
参考書籍:孫子 (講談社学術文庫) 著者:浅野 裕一