成果物に必要な作業を要素分解してWBSツリーを作ろう
PMBOKガイド(第6版)では「WBSの作成」というプロセスが存在します。
「WBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャ)」とは、
成果物を作成するために「必要な作業を全範囲にわたって階層的に分解」したものです。
WBSを作成し、成果物に必要な作業を階層化することで、
成果物に必要な作業の明確化、
スケジュール作りの材料、
予算作成の基礎、
作業アサイン範囲の明確化などに、
役に立っていきます。
PMP(ProjectManagementProfessional)試験や情報処理試験にも出てくる、
このWBSを理解していきましょう!
WBS作成の前に必要な情報
PMBOKガイドでは、
「WBS作成プロセス」に必要な情報(インプット)として以下のものを挙げています。
一つは要求事項文書です。
これはプロジェクトに関わるさまざまな関係者(ステークホルダー)から、
そのプロジェクトに求められている要求が書かれている文章です。
一度で決まるものではなく、ハイレベルなものからどんどん詳細化していく文書です。
そして、プロジェクト・スコープ記述書です。
こちらは、
製品の特性だったり、成果物の概要や必要な要件、
受け入れ基準や、プロジェクトの除外事項(やらないことをまとめたもの)などが書かれている文書です。
その他にもプロジェクト計画書等の文書が、
WBSを作成するために参照する文書としてPMBOKガイドに書かれていますが、
特に「プロジェクト・スコープ記述書」が重要になっていきます。
(どんな製品をつくるのか書かれていますからね。)
WBSを作成しようと思われたら、
まずは上記のような文書があるのか確認してみるのが良いでしょう。

これらの文書を基盤として、WBSを作成していきます。
WBSツリーとWBSの要素
要素分解
プロジェクトスコープ記述書などをもとに、
成果物を構成する作業をマネジメントしやすいレベルまで、
階層関係を考えつつグルーピングして、小さく要素ごとに分割していきます。

要素分解には、
成果物の概要からトップダウンに作業を分解していく方法や、
組織にガイドラインがあるならそれを利用する方法したり、
WBSのテンプレートを利用する方法など、さまざまです。
専門家や既に経験のある経験者、
チームメンバー等と一緒に色々と試行錯誤しながら、
プロジェクトに沿ったWBS作成法作成していくことをお勧めします。
作成時のポイントとしては、
漏れがないようにしておくこと。
同じWBS要素が存在しないようにダブりなく用意しておくことが重要です。
ロジカルシンキングのMECE(漏れなく、ダブりなく)の考え方に近いでしょう。
「下位のWBS要素を全て集めると、取りこぼしなく上位のWBS要素になるように構築すること。」
これを100%ルールといいます。
また、
例えばプロジェクト初期では下位のWBSが細かく要素分解できないこともあるでしょう。
「将来このような作業もいるだろう。」と、想像で細かく分解しすぎないことも重要です。
検証を進めないと見えてこない作業は無理に細かく分解せず、上のレベルの要素に留めておきます。
ローリングウェーブ計画法などに基づき、
プロジェクトが進むにしたがって、段階的に分解していく形が良いでしょう。
WBS要素の種類と役割
WBSの要素には3つの種類があります。
ワークパッケージ
まずはワークパッケージです。
これはWBSツリーにおける最下位のレベルの要素になります。
コントロールアカウント
ワークパッケージの上位に位置するWBS要素です。
コスト、スケジュールの状況を計測する上で利用されます。
「コストやスケジュールが今どんな状態で、今後どうなっていくのか?」
そういったことを予想するために利用するには、
最下位のワークパッケージでは、粒度が細かすぎるため、
もっと上位のWBS要素として取り扱うレベルとして取り扱うのが、コントロールアカウントです。
計画中のパッケージ
計画中のパッケージとは、
コントロールアカウントよりは下のレベルのWBS要素で、
ワークパッケージよりは上のWBS要素になります。
プロジェクトの序盤や中盤の段階では、
まだワークパッケージのレベルまで分解出来ず、
スケジュールが立てられないものです。
そのような時に「計画中のパッケージ」を利用します。
将来ワークパッケージとして分解出来るパッケージにあたります。

作業開始の前にスコープクリープを防ぐ!WBS辞書
「これも必要じゃないか?」
「あの仕様も足した方がよいのでは?」
このように、知らないうちに仕様が増大していきコントロールできなくなることを、
「スコープクリープ」といいます。
作業が開始されてから、
このスコープクリープが発生すると、さまざまな障害が出ていきますよね。

WBS上でこのスコープクリープを発見し、
作業開始の前に防止する事が出来ます。
そのために、WBS要素にさまざまな詳細情報を用意しておきます。
これらの付加情報を「WBS辞書」といいます。
WBSを階層化出来たら、個々のWBSに必要な詳細情報を記述しておきます。
WBS辞書に書く内容としては、PMBOKガイドでは下記のような情報を挙げています。
- WBSを識別する番号
- 作業内容
- 前提条件や制約条件
- 担当する組織
- スケジュールやマイルストーン
- 必要な資源
- コスト
- 受け入れ基準
- 品質に関する要求事項
- ETC…
これらを各WBS要素に用意しておくことで、
スコープクリープが発生しそうなとき、未然に防ぐことが出来ます。

スコープベースライン
WBSを生成するために利用する「プロジェクト・スコープ記述書」、
そして、「WBSツリー」、「WBS辞書」。
これらをあわせて「スコープベースライン」と言います。
このスコープベースラインは、スケジュールやコスト、さまざまなプロセスの指針となっていきます。
つまり、重要!ということですね。
ありがちなのが、プロジェクトの概要書から、
いきなりスケジュール作成などに入ることがあったりします。
しかし、WBSを作ってみるというプロセスが入り、
スコープベースラインを用意してみることで、スムーズな開発が期待できます。
参考書籍: プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOK®ガイド 第6版 PMP Exam Prep: Accelerated Learning to Pass the Project Management Professional (PMP)